2019年 世界10大リスクを分かりやすく
「世界10大リスク」という言葉をご存知でしょうか?
政治リスクを専門とするユーラシア・グループが毎年公表する「世界10大リスク」のことで、マーケットを動かす可能性のある世界各国・地域の政治リスクをまとめたものです。
下記のページにて公表はされているものの、いかんせん要点が分かりづらい…
そこで、この「世界10大リスク 2019」を、分かりやすくまとめてみました。
1.悪性の種
大きく言うと、地政学的リスクのことを言っていると思われます。
「米国およびその他の先進工業国における政治制度や枠組みの強さ。
大西洋同盟。米中関係。EUの現況。NATO。G20。G7。WTO。ロシアとクレムリン。
ロシアとその近隣諸国。中東やアジアにおける地域的影響力をめぐる政治力学。」
つまり、各国の地域・場所にもとづいた関係・同盟などが原因で、問題が起こるかもしれないということです。
自分の国、または自分の国が属するグループ同士での対立が激化する。といったところでしょうか。
ただし、アメリカとの同盟関係は、至るところ・多くの国において、弱まる方向に動いているようです。
2.米中関係
これは、主に米中貿易戦争のことです。
アメリカとしては、自国のハイテクや国家安全保障関連分野において、中国からの輸入品に対する依存を減らしたい。
投資の制限や輸出規制、知的財産の移転を制限したい。
そのため、それらを米国企業に義務付けようとしています。
中国としては、HUAWEIを始めとする自国の製品をアメリカで売りたい。
しかし、それができづらくなってきているため、
サイバーセキュリティ法や独占禁止法に基づく判決など、独自の非関税措置をもって報復しようとしています。
この両国の思惑が交錯し、貿易戦争(お互いに相手国からの輸入品に関税をかける)、果ては軍事衝突が起こる可能性もあると見られています。
また、仮に貿易戦争が終わったとしても、米中関係に必要な最低限の信頼が消滅してしまったという指摘もあります。
3.熾烈化するサイバー紛争
サイバー攻撃を仕掛ける側と守る側。
いたちごっこのように繰り返されている。
また、個人が国家をサイバー攻撃することもあり得ると言われています。
失うものが少ない、非国家主体だから。
同様の理由で、北朝鮮は、インターネット環境が発達していないので、報復されてもほとんど失うものがない。
だから、米国などへの攻撃モチベーションが上がるのだそう。
失うものがほとんどないわりに、与えられる被害は甚大なので。
4.欧州のポピュリズム
EU各国の議会の選挙では、ポピュリスト勢力が力を伸ばしている。
ポピュリストとは、
ポピュリズム=「一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用して、大衆の支持のもとに、既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しようとする政治思想、または政治姿勢」
(Wikipediaより)
これに賛同する人たちのことです。
ここで言われているポピュリストとは、EU懐疑派の人たちのことです。
彼らの存在が大きくなりすぎると、EUとしてのまとまりがなくなり、EU内、ひいてはEU外の国々の混乱を招くというリスクがあります。
EUとして、移民、貿易、法の支配など、主要な政策上の問題について合意することが重要であるにも関わらず、です。
5.米国の内憂
トランプ大統領の弾劾・解任に関わるリスクです。
その可能性は低いとされていますが、それ以外にもトランプ大統領のビジネスへの法的措置、それに対するトランプ大統領の報復で、アメリカ国内が混乱する恐れがあります。
6.イノベーション冬の時代
「政治的圧力によって、次世代の新技術を推進するための財政的・人的資本を減らさざるを得ない時代に向かっている」
というリスクです。
つまり、米中に代表されるように、自国内または安心できる国でテクノロジー分野を発展させようとすることで、
人材の交流やサプライチェーンが限られてしまい、5Gネットワークの構築などの次のイノベーションが遅れてしまう。
また、中国などの、最も費用対効果の高いサプライヤーから調達ができなくなると、
製品価格が高くなってしまうということが起こりうるのです。
7.非有志連合
かつてアメリカは、アメリカ主導の世界秩序と それを支える制度や枠組みに従う国々の連合を率いてきました。
しかし、トランプ大統領は就任時、アメリカ・ファーストの名のもとに、アメリカは世界の指導者の地位から降りるべきだと主張しました。
それが発端となり、自由主義的な秩序を支持せず、自国第一主義=ナショナリストの性質を持ったリーダーが、各国に生まれています。
彼らは、同盟関係を結ぶことをよしとしないため、非有志連合と呼ばれ(ユーラシアグループによって命名)、
その連合は全体として国際システムの崩壊を加速させるだろうと見られています。
8.メキシコ
メキシコの新大統領アンドレス・ マヌエル・ロペス・オブラドールは、
着任当初から政治システムに対する一定の権力と支配力を有しています。
その大統領が行おうとしているのは、国有企業の役割強化(特に、エネルギー部門)で、その結果すべてが生産に悪影響を及ぼし、メキシコの財政をさらに悪化させるだろうと見られています。
9.ウクライナ
ロシアとウクライナの間には緊張とわだかまりがあり、2019年はそれが選挙の攻防戦と絡んでさらに深刻化するだろうと見られています。
ウクライナの選挙においてロシアの介入があったと判断されれば、米国およびEUがロシアへの制裁を強化すると見られています。
10.ナイジェリア
ナイジェリアは、アフリカで最も重要な市場とされています。
しかし、政治に不確実性が非常に高まる可能性があります。
というのも、そのナイジェリアでは、2019年に、指導者を決める重要な選挙があるのですが、選挙はおそらく接戦となり、結果に異議申し立てが行われる、あるいは最終的な決着がつかないことも考えられます。
そうなれば、ナイジェリア国内の混乱は避けられません。